「PCE Works」はレトロゲーム界の救世主か!? 恐怖の大王か!?(後編)


<ゲーマー市場とコレクター市場>
 
 また会ったね!
 PCエンジンの海賊版をリリースしつづける謎のメーカー「PCE Works」の実態に迫る取材記事の後編だよ。彼らがつくっているのはまぎれもない海賊版、偽物、コピー品だ。それを売るのはれっきとした犯罪行為である。はたして彼らは何を考え、何を成そうとしているのだろうか!

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 ※こちらは商品に付属するグッズの一部


 前回、私オロチはPCE Works中心メンバーへのインタビューを敢行し、その志や目的を聞き出すことに成功。しかし、いくら彼らと会話を重ねても一向に理解が追いついてこないのだ。

 さっそく続きからどうぞ。
 

orotima-ku1.pngオロチ:あなたがたの製品が日本のオークションを荒らしまくってるのはご存知ですか?

PCE Works:問題ありません。私たちは売り手がPCE Worksの製品だということを明示していることが重要だと考えているからです。orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngオロチ:なるほど。偽物とわかって売ってる人間と買ってる人間がWINWINの関係だから別にいいじゃんって論法ですね。でもそれって他の誰かが負けてるだけですよね?

PCE Works:そうは思いません。過去数年間を振り返ってみて下さい。我々のreprosが純正品に害を与えていたでしょうか。それらのプレミア価格は相変わらず高騰しつづけています。orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngオロチ:高騰してるから良いと言える根拠は何ですか?

PCE Works:私たちは「ゲーマーの市場」と「コレクターの市場」は似て非なるものと考えているのです。たとえば『サファイア』の複製品を6000円で買う人間は、オリジナル版が15万円で売っている市場にはいません。orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngオロチ:なるほど。一理あるかも。日本の市場はその区別を明確に意識して来なかったかもしれません。


 この指摘は正直、興味深かった。

 つまり我々(私を含めた弊ブログ読者の皆さん)に買い手の姿が見えないのは、おそらくコレクター側の人間が多いからってことか。そして、転売ヤーたちの手を介しているとはいえ、ヤフオクで彼らの製品が潜在的ニーズを爆発させてる理由もそこにある気がする。




<急展開に心揺らぐ>

 続けて、衝撃の事実、行くよ。


PCE Works:私たちの商品はほとんど39か49ユーロで国際送料込みなのです。orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngオロチ:日本からの注文でも送料無料?

PCE Works:もちろんですとも。orotima-ku1.png


 なんと、PCE Worksの製品は公式サイトで日本からでも購入できるという。しかも国際送料込みという破格の待遇で。ってことは何かい。ヤフオクで転売ヤーに札束積んでるひとたちって何かの苦行なの? そういうエキササイズでも流行ってる?

 だからと言って当サイトは決してここから直接買うことを推奨しないということだけは強く断っておく。

 しかしいったいどういうつもりなんだこの集団。ますますわからなくなってきたのは事実だ。頭が混乱してきた私は、こんなことを口走っていた。


orotima-ku1.pngオロチ:もしかしてあなたたちは救世主になるつもりですか? 日本全国のレトロゲームファンが真実を知りたがっています。

PCE Works:だったら、確かめてみましょうよ。orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngオロチ:!?

PCE Works:差し支えなければ私たちはあなたへBOXセットを送ることができます。自分の目で確かめてみたらいかがですか?orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngオロチ:の、望むところだ!


 何だこの急展開(笑)

 ドイツの諺に「Taten sagen mehr als Worte.」というものがある。直訳すると「行動は言葉より多くを語る」という意味だ。思わず主語がでかくなってしまった私に対して、彼らが出した答えはまさにそんな金言の如く、ゴチャゴチャ言ってないでやってみろ的な、自惚れた挑戦状だったのだ。ここで逃げたらヘビの名が廃るっしょ!

  執念深さだけで20年間、ファミコンを遊んできた私オロチだ。PCエンジンデビューこそつい最近だが(最近なのかよ)、受けて立とうじゃないか。




<ゲームをするのも一苦労>

 10日後――
 本当に来ちゃったよ。はるばるドイツからPCE Worksの荷物が。実はあとでわかったことなんだけど、ウェブサイトにちゃんと「レビューしてくれるひとへは無料でプロモーションBOXを送ります」というようなことが書いてあったんだよね。箱に「PROMO INSIDE」なんていう専用シールまで貼っちゃってさ。

 ごめん。何度も聞くけど、ここって海賊版メーカーだよね?

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 しかし、なにやらひとつ問題があったようだ。そういえば、これを発送する前に彼ら、こんなこと言ってたっけ。

 プロモーションソフトの在庫が切れてたから製品版を入れておきました。


 なんのこっちゃ知らんけど、問題ならこっちにもあるから安心してくれ。それは私がPCエンジンスーパーCD-ROM2を動かす環境を持ってないということだ。だが送ってもらったからには実際にプレイしてこの目で確かめるのが筋だし、相手が悪党であろうが、畜生であろうが仁義だけは通すぞ!


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 なんて意気込んで、さっそく大須の某ショップでPCエンジンDUOを購入。

 決して安い買い物ではなかったが、動作品として売っていたDUO。いざ家に帰ってプレイしようとしたらまさかの電源ボタン不良というトラブル発生だ。ムシャクシャして記事をアップしたら「DUOはジャンク率高い」って教えてもらった。なるほど。だからDUO-Rのほうが割高なのね……


 1週間後――
 次の休日になって某ショップへ返品に向かう。別のDUOと交換してくれるって店員さんが言ってくれたんだけど「DUO-Rにしようかな」って切り出してみたところ(もちろん差額は払うつもりで)、店員さん「わざわざ持ってきてくれたから」ってサービスしてくれて、思わず感動してしまったよ。
 なんていうか、ひとっていろんなひとに助けられて生きてるんだなあって(笑)

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 なんの話やねん!




<どこまでも平行線>

 本筋に戻ろう。プレイ環境もそろったし、いざ、開封の儀だ。ドイツから届いたダンボールの中には、なにやら想像以上に色んなものが詰まっていたのだった。

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 ※モザイク処理しています

 何度もいうがこれは海賊版であり、決して褒められたもんじゃない……

 しかし、ブラフかもしれないがこれだけのものを易々と送り付けてくるなんて正直、震えたぞ。怯えているのではない。武者震いなのだ。バリバリと容赦なくビニール包装を破りながら、様々な思いが交錯した。

 宣伝の片棒を担ぐつもりは毛頭ないので、これ以上、詳しく書けないが、私オロチはたしかにこの目でこれらの製品を見たことだけはお伝えしておこう。


 最後にこんな疑問をぶつけてみた。


orotima-ku1.pngオロチ:正規品と区別つけるためにロゴを入れているなら、なぜジャケット側に入れないのですか?

PCE Works:我々の製品のほとんどはBOXセットなので問題ないと考えます。個別のジャケットには以前、ステッカーを貼っていたのですが不評だったのでやめました。orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngオロチ:ではあなた方自身は、複製品と正規品を見分けることはできますか?

PCE Works: 正規品はセロハンラッピングの開口部にストリップを採用していますが、我々の製品はそれを有しておりません。オークションの出品物を見極めたいときは、いつでもお手伝いしますよ。orotima-ku1.png


 最後までツッコミどころ満載だね!


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 ※ビニール包装を剥がすとき、引っ張ってピーってやるやつ

 ちなみに彼らのいう開口部のストリップとはこれのことだと思われる。ソフトは私オロチが唯一持っているスーパーCD-ROM2の新品ソフトの『パニックボンバー』。たしかにPCE Worksのソフトはそのようになっていなかった。 ※1




<まとめ>

 今回の取材には2つの意義があると考えた。ひとつは彼らの実態を暴くこと。彼らと接触しありのまま起こったことや、彼らが何を考えているのかを皆さんにお伝えすることで、まずは現状を把握する。そしてもうひとつが問題提議というやつ。海賊版が堂々と売られていると言う事実、それがなぜか野放しにされているという事実を広めること。

 そうすることで何か大きな動きになるんじゃないかと考える。私一人が突撃しただけではご覧の有様だ。つまり一人じゃ何もできないということもわかった。しかしながらこの記事がきっかけとなり第2の矢、第3の矢が放たれるかもしれない。私は事態が好転することだけを願っているのだ。



 ※ 画像の使用にはPCE Worksの許諾をもらっています
 ※1 誤解を生むような表現を修正。予定していたレビュー編はとりやめました。2017/11/11 

「PCE Works」はレトロゲーム界の救世主か!? 恐怖の大王か!?(前編)


<ヤフオクで猛威>

 1年くらい前、ヤフオクで妙なBOXセットを発見した。それはPCエンジンスーパーCD-ROM2のソフトが3本セットになっているもので、メーカーはPCE Worksという聞いたことないところ。やけに洗練された感じがしたので、復刻版なのかなと思ったんだけど、そんなものも聞いたことがない……

 気になってツイッターで質問してみたことろ、フォロワーさんから「ドイツの業者が無断でつくって販売しているもの」と教えてもらい「なにそれ」って思った。そのときはそれ以上、興味が湧かなかったので忘れていたんだけど、先月とあるネット旧知の方から「このままじゃ、CD系レトロゲームがやばいかも」という不穏なメールを頂いてしまったため、飛び起きるように調査を開始したのだ。

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 ※こちらは商品に付属するグッズの一部


 なんでも最近、そのPCE Worksのコピー品がヤフオク!で猛威を振るっているらしいじゃないか。もう、偽物の類なんておなかいっぱいだよ。なんて思いながら調べてみたら、結局は驚いたのだ。

 こちら……

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 ※2017年8月~9月のオークション結果の一部
 
 おいおい、なんだこれ!?
 いつの間にか取引数がものすごい増えてるじゃん!しかも落札額が半端じゃない。これは本当にやばいことになってるぞ!?





<「PCE Works」は何者なのか?>

 一般的なイメージとしてゲームソフトをコピーしているような業者は表舞台には出てこないものだ。しかしながらこのPCE Worksというメーカーは何を考えているのか堂々と公式サイトを開設しており、しかも通販までしていた。

PCE Works公式サイト

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 なんなら現在、PCエンジン30周年セールをやっているくらいのポップさすらある。
 本当にここライセンス無いんだよね。何度も確かめたくなっちゃうよ……

 気を取り直して公式サイトを上から下までなめるようにチェック。

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 しかし、すごいな。

 そのラインナップには正直、目を見張るものがあるのだ。いずれもPCエンジンのSUPER CD-ROM2ソフトのようだが、見たことないパッケージもちらほら。このメーカーが最初に発表したのは2014年の「PCEメモリーズ」というボックスだったようで、『レニーブラスター』『風霧』『フォーセットアムール』『シルフィア』の4本がセットになったものである。いずれも鼻血が出るくらいのプレミアソフトじゃないか。

 さらに『ツインビーりたーんず』※1といった商品化されてないものや、『スペースファンタジーゾーン』※2といった未発売品。さらにPCエンジンに移植されてすらいない『ロックマン』※3といったゲームまで、ご丁寧に商品化されている始末。

 何度も同じことを聞いて恐縮だが、これ全部「海賊版」なんだよね?

 しかもよくある本物そっくりにつくってる偽物と違って、わざわざ説明書の裏表紙やCO-ROM表面に「PCE Works」というロゴが刻印がされているっていう謎のこだわり仕様だ。

※1 PCE版『ときめきメモリアル』に収録されていたミニゲームのひとつ。
※2 ほぼ完成していながら発売中止になった幻のソフト。
※3 海外のアマチュアが無許可で勝手に移植した同人作品。




<海外での評判>

 売ってるものはだいたいわかった。クオリティは高いしラインナップも絶妙なものばかりだ。しかしこのような所業、海外ではどのように思われているのだろう。

 さらに調査を進めると中心メンバーと思われる人物の名前を特定できた。Tobias Reich氏※1。彼はアップスキャンコンバーターの研究で欧州レトロゲーム界に名を馳せた人物だった。海賊版をつくってはいるが、そのスタンスは「アジア圏のひとたちが生活のために手を染めている」という従来の無断コピーへのイメージとはかけ離れている。

 たったひとつだけ確実なことが言えるとしたら、それはTobias氏がガチのPCEオタだということだ。

 そのため、マニアに対して痒いところに手が届くプロダクションスキルが尋常じゃないことは認めざるを得ない。独自のコレクターボックスや、オリジナルグッズなどへのこだわりは前述の通りである。


 ※1 PCEWorksの希望により、Tobiasという記述を以降「PCE Works」に置き換えさせていただきます。理由:あくまでもこれらの実績や見解はPCE Worksというグループによるもののため。2017/11/9 修正

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 ※例えばこれはパンティ付という驚きのコレクターズボックス。


 そんな氏率いるPCE Worksは過去にはPCエンジンCD-ROM2プレミアソフトの代表的作品である『銀河府警サファイア』のまぎれもない偽物をつくっていたり、現在でもゲームを英語へ翻訳する際に別の海外フォーラムの有志がつくったものを丸々パクってしまったりと色々やらかしているという話もあり、その評価は分かれるところだ。

 たとえば2015年のこちらの海外フォーラムDigitpress.comでは以下のようなやりとりがされていた。

「PCE WorksはコナミのIPを盗んでコピー品を売っているが、なぜコナミは動かないんだ?」

「ニッチな需要のために、新しいパッケージをデザインしたり、生産する技術を習得したりするのは大変なことだ。私は立派だと思うよ。」

「しかし、彼が過去に『銀河府警サファイア』の偽物をつくっていたことを忘れてはいけない」

「それが何か問題か? これだけのものを提供してくれているんだ。それなりの報酬があってしかるべきじゃないか」

「少なくとも彼が『ロックマン』を移植したことについてはコミュニティにも悪影響を及ぼしているね。本来PCEソフトでないものを出す意義がわからない」

「コナミのような大企業はレトロゲームで利益を出すことは無理だが、ライセンスの許可も出さないだろう。そのうち彼は訴えられると思うよ……」



 一方、海外掲示板RedditGamingNeoGAFでもたびたび以下のように言及されている。

「彼は犯罪者です」

「海賊版のくせに高過ぎるよね」

「私はいくつか持ってますが悪くない買い物でした」

「もしあなたがプレミアソフトを安く手に入れたいなら彼は神です」



 また、フランスのフォーラムgamopatではこのような意見も。

 たとえば私はローレックスの時計が欲しくても中国製の偽物を5ユーロで買うつもりはありません。私がコレクターになったのはゲームの物資的な魅力だけでなく、歴史や希少性に価値を感じるからです。彼らは歴史や希少性までコピーできますか?






<PCE Works中心メンバーを直撃>

 海外での評判もだいたいわかった。しかし一番知りたいことがまだわかっていない。それは、このメーカーが「何の目的でこんなことをしているのか」ということである。

 こういうときは本人に直接聞くのが一番早いのだ。

 今はネットの時代。しかも相手は普通に公式サイトを開設している人物である。買うふりして質問攻めにしてやるぜ!なんて思いつつ公式サイトに載っている連絡先へメールを送ってみたところ、あっさりTobias氏本人(PCE Works)から返事がかえってきて、逆に恐縮してしまったのだった。

 それではさっそく彼とのやりとりを、わかりやすくアレンジしつつ再現してみよう。


orotima-ku1.pngオロチ:あのう、これって正規品ですか?

PCE Works:我々の商品はほとんどが"repros"です。orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngオロチ:つまり複製品なんですね?

PCE Works:そうです。NESやメガドライブと比べて、海外にはPCエンジンのファンが少ないのです。orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngオロチ:それは少ないから問題ないという認識でしょうか。目的は何なんですか?

PCE Works:ひとつはプレミア価格に対抗するため。もうひとつは世に出ていないソフトの復刻です。orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngオロチ:なるほど素晴らしいですね。目的だけは。しかし、だからといって偽物をつくるという手段についてはどのような見解をお持ちで?

PCE Works:reprosの歴史は長い。あなたはNESやSNESのタイトルを販売するウェブサイトを容易に見つけることができるでしょう。しかしPCエンジンについては存在しなかったのです。私たちが始めるまでは……orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngオロチ:真実はこれからの歴史が証明するってやつですか。なるほど立派ですね。志だけは。

PCE Works:我々の商品を見てください。ちゃんとロゴマークが入ってるでしょう。orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngオロチ:そうか。あのマークはオリジナル品と区別をするためのものだったのか! ちゃんとした目的があって作ってるんですよというエビデンスとしての!?

PCE Works:まあ、そういうことですね。orotima-ku1.png


 何回かやりとりして私オロチは思った。

 やばい。彼ら、ちゃんと受け答えしてくれるし、まともなひとたちだ。これがドイツ人気質ってやつかと。しかしそれだけに、なぜこんなことをしているのか不思議なのだ。裁くつもりはない。理解できないからこそ理解したくて仕方ないのである。あくまでも追い求めるのは真実のみなのだから!

 そこで私はあの話題を振ってみた……


orotima-ku1.pngオロチ:そんな、あなたがたの商品が日本のオークションを荒らしまくってるのをご存知ですか?

PCE Works:……orotima-ku1.png


 果たして彼らの反応はいかに!?

 長くなるので今回はここまでにしておこう。後編では驚きの展開が待っているぞ。なんて煽ってみる(笑) 続きをお楽しみに!




 ※ 画像の使用にはPCE Worksの許諾をもらっています

任天堂vsハッカー社 謎の黒いファミコン「ハッカージュニア」をめぐる仁義なき戦い


<まるで暗黒面に堕ちたファミコン>

 バブル景気が湧き起った1986年――

 日本列島にファミコン旋風が巻き起こると、カセット交換屋、ディスクコピー屋など様々な怪しい便乗ビジネスが誕生した。ファミコン本体に連射機能をつけたり、スローモーション機能をつけてくれる改造屋もそのひとつだ。
 今回はファミコンブーム初期に、ひときわ異彩を放っていた、とある改造ファミコンにスポットを当ててみたい。

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 ※当時の広告1

 「武装化ファミコン Hacker Junior」
 「これがファミコンの最終兵器だ!」
 
 攻撃的なキャッチフレーズが躍る広告の中央に、まるで暗黒面に堕ちてしまったかのような禍々しい黒いファミコンの姿が見える。これこそ、知る人ぞ知る改造ファミコン「ハッカージュニア」だ。

 手掛けたのはファミコン裏物界のドン・ハッカーインターナショナルである。

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 当時の広告2

 こちらの広告は漫画風。中央には葉巻を咥え、山高帽にサングラス、蝶ネクタイにストライプスーツのマスコットキャラクタが大きく描かれている。ポップに売り出していたようだが、のちに大変なことになるなんて、この時点では知る由もなかっただろう……




<改造内容>

 気になる改造内容については別のタイプの広告を見てみよう。

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 主な改造は以下の4点だったようだ。

1.ハイパーショット(高速連射)
2.ビデオ端子出力
3.ステレオ音声出力端子
4.オートスローモーション回路



 この他にコントローラのコードが長い点を加え「5つのスゴイ」として謳っている広告も存在するので、コントローラのコードも長く改造していたようだ。また、改造は本体のみならず、連射機能についてはコントローラにも基板を埋め込んでおり、わりと広範囲な改造内容だったことが読み取れる。




<販売方式と価格>

 当時の広告といっしょに発行されていた「申し込み表」へ目を向けると、その販売方式と価格の全貌が見えて来た。

 ハッカージュニアを新品で買おうとした場合、2万2800円。下取りだと1万6800円。ハッカー社に改造を依頼した場合は7900円。自分でつくりたいひとへはキットが5800円で販売されていたようだ。

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 いずれも送料込みの値段である。まとめると販売方式は大きく分けて以下の3種類あったことになるだろう。

・改造品の販売(下取り方式含む)
・改造の請け負い
・改造キットの販売


 これはのちほど大きなポイントになるので、覚えておいてほしい。




<開発経緯とハッカー社のスタンス>

 改造内容や販売方式はわかったが、そもそもハッカージュニアはどのような経緯で開発されたのだろうか。調査をすすめるとファミコン通信1993年3月12日号掲載の漫画「あんたっちゃぶる」に、少し言及されていたことが判明した。

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 ※ファミコン通信連載「あんたっちゃぶる」より。


 当時の社長・萩原暁氏は以下のように述べている。

 それが最初の仕事ですよ。本をつくるので技術をもった人間がいましたから、じゃあ作っちゃえってことになりまして。


 どうやら改造ファミコンがゲーム事業へ参入する最初の仕事だったようだ。そして任天堂については以下のようにブラックジョークを飛ばしていた。

 みなさんが思われるほど、あそこと仲悪くはないですよ。いつも法廷で顔を合わせた仲ですから。



 ファミコン通信1993年3月19日号掲載の後編では、ハッカー社が任天堂に許可なくゲームソフトを出し続けることができる理由について述べられていた。まとめると以下のような見解となる。

・CPUに著作権はない
・ファミコンのCPUは昔からあるもの
・そこで走るゲームを作ること自体に違法性はない


 ちなみに他のメーカーが勝手に作らない理由については以下。

・他のメーカーには流通販路がない
・ロムの厚さや形には特許は商標登録がある
・例えばPCエンジンのCD-ROMは2年間研究した
・普通にNECと契約するほうが安上がりだった


 つまりハッカー社がファミコンソフトを勝手につくっていたことについては、違法性がなかったため、任天堂は止めることができなかったのである。




<nintendo事件とは?>

 さて、予備知識はここまでにして、いよいよ本題だ。

 それは1992年5月27日の出来事――
 ファミコンが発売されて9年が経っていたその日、裁判所からハッカー社へ106万7040円(+法定金利)の支払いを命じる判決が下ったのだ。その相手は何を隠そう任天堂である。萩原元社長が「いつも法廷で顔を合わせていた」というのはジョークではなく、本当のことだったのだ。

 これが世に言う「nintendo事件」である。

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 ※当時の広告3

 任天堂は長い間、ハッカー社がHなファミコンソフトを大量生産してボロ儲けしていたことを苦々しく思っていたものの、その違法性を立証することができずにいた。そこで、同社が1986年8月から87年12月まで販売していたハッカージュニアに目をつけたのだろう。

 上記のようにハッカー社は正攻法よりも高くつくことがあるにも関わらずゲームソフトの自主制作にこだわっていた会社である。また「PCエンジンSUPER CD-ROM2を2年間研究した」との証言でもわかる通り、ハッカー社には、万全の体制を期してから法律の目をかいくぐって商売する狡猾さがあったのだ。

 しかしながらハッカージュニアについては初参入事業であったことを思い出して欲しい。つまり法律対策が甘かった可能性が高いのだ。なんとかハッカー社にギャフンと言わせたかった任天堂が、それを見逃すはずもなかったというわけだ……




<それぞれの主張と判決>

 それではさっそく裁判の様子を見ていこう。

 以下のやり取りは、私オロチが判決文を読んだ上での個人的な解釈を、架空のキャラクタである「N堂」君と「Hカー」君に再現してもらったものである。したがって、実際の裁判の「流れ」については正確に伝えるものではないことをご了承の上、お楽しみ頂きたい。

 ※ハッカージュニアの商品名については判決文に準じてローマ字表記とした

<それぞれの主張>

orotima-ku1.pngN堂:おたくはんの商品、「ファミコンの最終兵器」とか言うて売らはったんは商標権の侵害と違いますやろか。

Hカー:いやいや、広告にはちゃんと「ファミコンは任天堂の商標です」ってお決まりの文言を入れたし、会社の所在地とか電話番号とか載せてるし、問題ないっしょ。orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngN堂:そやけど、うちの商品と意図的に混同させてますやろ。こんなん不正競争行為とか言うんと違いますの?

Hカー:俺たちの商品には「HACKER JUNIOR」って立派な名前があんの。それに、広告はマニア雑誌にしか出してないから、わかってるやつしか買わないよ。混同なんてありえないっしょ。orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngN堂:おたくはん、うちの商品にトランジスタとか、コンデンサとか、なんやぎょうさん仕込まはって、えらい改変してはりますやんか。これ買うたひとが「壊れた」言うて来はっても、うちは対応できひんよ?

Hカー:いやいや、「HACKER JUNIOR」にはハッカーの保証書つけてるし、そもそも、あんなのはチョットした改造でしょ。連射とかスローモーション機能とか足しただけじゃん。ファミコン本来の機能を改変してるわけじゃないよ?orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngN堂:よう言うわ。ファミコン本体が1万4800円。おたくのんが2万2800円。8000円も上乗せしてもうてんのに、チョットもヘチマもあらしまへんえ。ホンマかなんわー。

Hカー:あのねえ。俺たちは「HACKER JUNIOR」つくるのに正規ルートでファミコン買ってるの。その時点でそっちに利益があるでしょ。そもそも誰も損してないよね?orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngN堂:そらないわ。おたくら「ファミコン」言うたはりますやん。「ファミコンの最終兵器」て。そら使用料発生しますがな。なんや1万台くらいあんじょう売らはったんのと違いますか。1台800円でええさかい合計800万円払うておくれやすの。

Hカー:いやいやいや。800万は無理っしょ。だいたい1万台も売れてませんて。ぶっちゃけ585台だよ。たったの585台!orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngN堂:そうかいな。ほんなら売上の10パーでよろしおすわ。

Hカー:ちょっと待ってくれよ。だいたい商標権って「転売を差し止める権利」じゃないよね。ちょっと改造はしてるけど、買ったもんを売るのは自由じゃん。そっちの売上が減少してるわけでもないし……orotima-ku1.png

orotima-ku1.pngN堂:商標法38条2項は損害について言うてるもんであって、売上減少が必須条件ではおまへんえ。ややこしこと言うとらんと、はよう払いなはれや。みな、怒ったはりますよ?

Hカー:そもそも、第三者がファミコンを買った時点で商標権は消尽してるはずだ。俺たちはビタ一文払わないっ!orotima-ku1.png


<判決>

orotima-ku1.png裁判長:はいはい。静粛に~。判決を言うよ~。被告Hカー君に金106万7040円の支払いを命じまーす!

orotima-ku1.png裁判長:ファミコンは超有名だから「HACKER JUNIOR」って名前つけたところで、商標は打ち消せないよ~。したがって混同は起こるし、出所・品質表示機能が害されるから、商標侵害は認められるよ~。

orotima-ku1.png裁判長:商標権の消尽ってのは第三者が転々と販売を繰り返してる場合に論じられるのであって、広範囲に及ぶ改変によって同一性がないものとした上で「ファミコン」って商標を残したまま販売しちゃってる今回のケースには当てはまらないよ~。

orotima-ku1.png裁判長:原告がこんな怪しい商品にライセンス与えるわけないので、販売価格の10%を要求する気持ちはわかるけど、被告はファミコンを正規ルートで買ってるし、諸般の事情をかんがみると8%が妥当かな~。したがって2万2800円の8%×585台で106万7040円だよ~。

orotima-ku1.png裁判長:なお、改造の請け負い、及び改造キットの販売については罪を問わないよ~。裁判長からは以上でーす。

N堂:ほな、ハッカーはん、よろしゅうおきばりやす。

Hカー:完全お手上げ。ホールドアップ!orotima-ku1.png
 出典:nintendo事件(判例大辞典)


 かくして、長い間、任天堂と法廷で争っていたハッカー社は、ついに裁判に敗れたのであった。

 しかし同社は、その後も独自の路線を突き進み、マップジャパン名義でプレステへ正式参入したり、エアプランツ名義でPCゲームにも進出を果たしたが、2001年にリリースしたPCソフトを最後にゲーム業界から姿を消している。




<まとめ>

 奇しくも、この裁判記録によってハッカージュニアは585台しか出回らなかったことが判明した。現在、この数字は他の希少ソフトに匹敵する数だと言える。

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 ゲームなど工業製品の一般的価値というのは、もちろん内容や見た目も重要だが、つくられた背景や、出回った数がハッキリすることでより定まっていくと私は思うのだ。

 なぜなら、知らないひとからしたら「ただの黒いファミコン」でも、その背景には任天堂とハッカー社の仁義なき法廷争いの歴史が刻まれているのである。そう思うと、この漆黒のボディがいっそう蠱惑的に見てこないだろうか。

 このような負のオーラをまとった怪しい存在も、ファミコン黄金期という奇跡みたいな時代に産み落とされた、貴重な歴史的遺産のひとつなのだ……


 ※ちなみに、N堂くんの写真はうちの妻がつくった任天堂本社ケーキである。せっかくなので今度ハッカージュニアケーキもくってもらうかな……



<おまけ:オークション資料>

 過去に数例、ハッカージュニアがオークションに出回ったことがあった。最後におまけとして、当ブログの資料から近年の2例を挙げておこう。

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 出回った例が少なすぎるため評価が定まっていなかったといったところだ。

 去年9月の出品物についてはジャンク品とのことだったが、結果については他に理由があるかもしれない。少なくとも、保証書が付いた完品ならこの何倍もの価値があると思われる。



<参考資料>


wikiによる「情報ロンダリング問題」について


 ※タイトル変更しました。


 最近、ゲーム部屋の棚の制作に夢中のオロチです。

 なかなかちょうどいい棚が売ってないので、ホームセンターで木材買ってきて手作りですよ。店員さんにカットしてもらうのですが、たいてい僕が計算を間違えてるので、家とホームセンターを行ったり来たりで休日がつぶれてますね(笑)


 さて、今回の注目記事はこちら▼

『ゲームボーイ クソゲー番付』に思うこと(パッケージゲームを死ぬまで遊ぶブログ)

 ゲームボーイ クソゲー番付 (マイウェイムック)※Amazonリンク



 ということで、ぜんぜん知りませんでした。『ゲームボーイ クソゲー番付』がプチ炎上してたんですね。発端はこちらの記事のようです。

 クソゲーという言葉がタブー化している問題はずいぶん前から指摘させてもらっていたので(参照)、ここ最近の「クソゲー」関連書籍の流れを見ていると、まあ、そうなるよねって感じ。それ以上の感想はありません!

 いろんな事情がありますよ。実際……


>最近はゲーム関連の書籍に掲載された内容がウィキペディアに掲載されるなど、書籍を基にする情報がネットに反映される事案が散見しているため、書籍のクオリティーは絶対に上げるべきだと思っています。



 これは同意です。私オロチもレトロゲーム書籍関連で執筆活動(匿名が多い)をちょくちょくしてますけどもwikiなんか見てると比較的最近の書籍でも、出典になってたりして驚きます。(1980年代の出来事について、2010年代の書籍が出典だったり)
 もちろん、関係者が後年になって証言したという場合もありますが、どう見ても「その本、どっかのネット情報を拾ってるだけじゃね?」っていうケースもあったりして、情報ロンダリング状態とでも言うのでしょうか。確証があるのかないのかよくわからんネット情報が書籍に載ることで「ちゃんとした出典元」みたいになっちゃうことが懸念されます。

 気を付けないといけないといけないですね。


>指摘されている内容がこのサイトに似ているんですよ。
 (ゲームカタログ@WikiのURL)



 これもわかるなあ。正直言って「ゲームカタログ@Wiki」はむちゃくちゃ参考になりますからね。とくにファミコン以外の知らないゲームのことを調べるときは重宝しますし、知ってるゲームでも自分以外のユーザー視点が知りたいときは便利です。

 しかしながらパクるなんてことはしません。僕には明確な理由があります。

 なぜかというと僕は職業ライターじゃないからです。プロじゃないから自分の書きたいことだけを書き、書きたくないことは書きません。そんなスタンスだから、せっかく紙媒体で文章が書けるのにパクるなんてもったいないと思っちゃうんですよね。

懐かしパーフェクトガイド あの名作が蘇るミニスーパーファミコン特集
 ※最近、オロチが参加した本


 モチベーション理論でいうところの金銭的報酬ってやつが目的となると、人間は「少しでも楽して儲けよう」というベクトルに傾きます。それは悪いことではないのです。違う言い方をすれば効率化ってやつですから。むしろ、ほとんどの職業ライターはそのベクトルを執筆スキルの向上方面へ振ってるため、驚異的なスピードだったり文章力だったりを発揮できるのでしょう。

 そもそも、プロと言われるひとたちは、効率を気にしない素人を圧倒するくらいの才能にあふれているひとが多い印象です。でも中にはそうでないひともいるのでしょう。是非、プライドを持ってやってほしいです。


 wikiの話ついでに……
 手前味噌ながら我がブログには、記事を書く上で「絶対にwikipediaを情報元にしない」という裏ルールがあります。wikiではこんなこと言ってたぜっていう文脈で引用することはありますけど、メインの情報元にはしてないはず。その理由は上に挙げた「情報ロンダリング問題」があるからなんですが、実は、一番大きいのは僕が自分の目で証拠を見てみないと気が済まない性分だからです(笑)

 レトロゲーム界にも当たり前過ぎたり、定説だったりすることが、いざ出典を探してみると「実はわからない」ってことがたくさんあります。

 だから僕は、たとえばファミコンが1ページでも特集されている1980年代の古い雑誌とか見つけたらとりあえず買っちゃうんです。そこに何かものすごい真実が載ってるかもしれない。でも、たいてい箸にも棒にもかからないクソみたいな内容なんですよ(笑)
 その都度「なんで買ったんだろう」って後悔するんですけど、最近は「そういう病気だ」と割り切ってますね。ただ、本ってかさばるのよ。いい加減、置くところがない……

 あっそうか。
 だから、僕は棚をつくってるんだった!

 木材って意外とゆがんでるんですよね。ホームセンターでまっすぐ切ってもらってるはずなんですが、ミリ単位では反ってたりするので、思うようにいかないんです。きっと木の種類とか木目とか、湿度なんかも関係するんでしょうね。奥が深いですよ……
 って、結局は棚の話っていう(笑)



orotima-ku1.pngいつか棚メインの話もしたい

闇のファミコンソフト『藤屋ファミカセシリーズ』の正体が判明


<ファミコンと毛糸の店>

 その店は藤屋と言った。小さな毛糸販売店である。しかし80年代末期から、いつしかそこは「ファミコンと毛糸の店」と呼ばれるようになっていたという……

 毛糸屋さんとファミコンにどんな関係があるのだろう。まさか『アイアムティーチャー』シリーズを売っていたからというオチではあるまい。その答えは藤屋店長の息子。通称「ドクター前田」と呼ばれている人物(当時35才)が、自主制作したファミコンソフトを売っていたからだったのだ……

 そのファミコンソフトこそ、藤屋ファミカセシリーズである。

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 ※藤屋ファミカセシリーズ3 (画像提供:非売品ゲームコレクターじろのすけさん)

 このソフトの名前を知っているひとは、相当のファミコン通だ。

 なぜならこれはマニアの間でも正体がまったく不明だったからである。そのため、長い間、裏物を含むファミコンソフトを網羅したサイトや書籍にもその名を見ることはなかったし、レトロゲーム店の買取リストにも掲載されることはなかったのだ。言うなれば、知るひとぞ知る「闇のファミコンソフト」である。

 それでも、ごく稀に市場に出ることがあったため(参照リンク)、存在だけは確認されていたのだった……



<キーワードは高田馬場>

 しかし、このソフトを幸運にも手にした者には、その正体について最大のヒントが与えられていた。なぜならこのゲーム、タイトル画面にご丁寧にも製作者の名前と住所が記載されていたからである。

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 ※『藤屋ファミカセシリーズ4』タイトル画面より

 さすがにプライベート情報なので黒塗りさせてもらったが、この通りである。

 この画面によると、シリーズ名(※1)はフジヤシンキングゲームズ。製造年は1987年。ということも読み取ることができるだろう。

 ※1:2017年10月5日修正



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 ※『藤屋ファミカセシリーズ3』(画像提供:非売品ゲームコレクターじろのすけさん)

 こちらのソフトにいたっては、カセットのラベルに住所と電話番号が書いてある始末。当然、無許可だったはずだが、堂々としたものである。



<FCソフトを自主制作した天才医師>

 それどころか、このドクター前田なる人物。1990年1月1日は発行された大人のためのファミコン情報誌「Gアクション」に、ファミコンソフトを自主制作した天才医師という触れ込みで、インタビュー記事が掲載されていたから驚きだ。

Gakushon0.jpg
 ※漫画アクション別冊「Gアクション」創刊号。切り口が面白い記事が満載。


 この記事によると、彼は某医大を卒業後、医療用レーザーの研究に着手。都内クリニックでレーザー治療を担当するれっきとした医師だという。

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 ※ちなみに同記事内にファミコンを代表するインディーズソフトの製作者として田尻智さんの記事も載っているところが興味深い(参照リンク


 ファミコンソフト制作を始めたきっかけは25才のとき。科学計算をする目的で「コモドールVIC-1001」というコンピュータを購入したこと。たまたま6502というファミコンと同じCPUだったため、とりあえず将棋のゲームをつくってみたということだ。

 もうすでにこの時点で天才である。

 源平碁や神経衰弱みたいな思考型ゲームは、グラフィックやサウンドに凝る必要がないので、休日を利用して、僕一人でもすぐにできてしまうと思ったんです。

 ※同インタビュー記事より

 そして1980年代後半にとうとう、ファミコンソフトを製作・販売するに至った。その舞台が冒頭の「ファミコンと毛糸の店」だったわけだ。




<藤屋ファミカセシリーズの種類>

 注目は当時、お店で配られていたという手作り感あふれるチラシである。
 
hujiyafamikase010.jpg

 これによると『藤屋ファミカセシリーズ』はA~Eまで5種類あったことが確認できる。

 このチラシの存在によって、現時点で確実に存在することがわかっている、非売品コレクター・じろのすけさん所有の上記の2本はそれぞれ「3=D」、「4=B」であることが判明。また「A」なるディスクバージョンが存在することも新たに判明した。

hujiyafamikase01.jpg

 こちらはパッケージに裏画像である。

 『源平碁』は日本古来のゲームであり、最近では「オセロ」と呼ばれてるそうだ。『逆源平碁』は石が少ないほうが勝ちというルールだという。左下に書かれた「ファミリーコンピュータとオセロは他社の登録商標です」という文言にはニヤリとさせられるが、それよりもパッケージがあったということに注目したい。



<思いもよらない事実>

 このインタビュー記事、なぜか後半はUFOの話に終始しており、それ以上の有益な情報は載っていなかった。そこで私オロチはドクター前田という人物に突撃取材するしかないと考え、彼が現在、どこで何をしているのか調査を開始。

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 ※同インタビュー記事よりドクター前田氏


 まずはドクター前田氏の本名と同姓同名の人物が、ゲームプログラムもできる「天才医師」として過去に数冊、本を出していたことが判明。
 その後、藤屋とまったく同じ住所の建物の中に、ホクロなどを除去するレーザー治療医院があることを発見。(書くまでもないと思うが、現在、藤屋は存在しない)その院長の名前も同姓同名であり、病院のホームページにはゲームのことはいっさい触れられてなかったものの、プロフィールを見たところ趣味に「UFO関連」とあったため、同一人物と断定。(UFO情報有益だったよ!)

 もしかしたら、取材できる?
 そう思った矢先、思いもよらない事実に突き当たってしまったのである。


maedaiin0.jpg
 ※ググった結果


 なんと、そのレーザー治療医院は、2016年3月25日に閉院していたのである。その病院のドアには、誰かの手書きでこのような張り紙がしてあったという。

 「院長、急逝のため閉院いたしました」


 ただただショックだった……
 ブログやツイッターの言及を見ると、たいへん人気のドクターだったようである。たしかに病院のホームページはアーカイブで確認したので正直「閉院してる」ことは覚悟していた。しかしまさかそんな原因だったとは思いもよらなかった。閉院を惜しむ患者の皆さんとは、まったく違うアプローチでこの事実にたどり着いた立場ではあるが、せめてご冥福をお祈りしたい。



<まとめ>

 今回の調査では今まで謎に包まれていた『藤屋ファミカセシリーズ』について、多くの新事実が得られた。

 そして何よりも「ドクター前田」という人物のひととなりに、ほんの少しだけ触れることができたような気がして感慨深いものがあったのだ。しょせんは裏物。裏ソフトの類なのもしれない(インディーズという言葉もある)。それだけの理由で距離を置くレトロゲームファンもいるだろう。しかしそこには必ず人間が織りなす物語がある。

 私はこれからもファミコン考古学の1ページとして『藤屋ファミカセシリーズ』の物語をつむいでいきたいのだ。



orotima-ku1.pngひきつづき調査中。
有益な情報待ってるよ!!





 スペシャルサンクス:非売品コレクター じろのすけ さん(オタク旦那と一般人嫁


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